危険なセックス — 性病群の大襲来
医学博士 ステッフェン・ジェニュイス
成相明人 訳
(以下は上記の書の抜粋ですから、段落のつながりには少々難があります。)
産婦人科医として経験を積むにつれて、私は、種々の性病と合併症の患者が多いことに気づきました。 医学誌によれば、性病の蔓延と、性病に関連する合併症の報告は増加する一方であるように見えます。これらの傾向を見極め、この分野で起きつつあることを全体的に把握するため、多くの研究がなされてきました。
ほとんどの大都市で、性病専門の診療所が、この種の疾病の検査と治療に従事しています。これらのセンターを訪れる患者は増える一方で、合衆国では、毎年、500万人が診療を受けています。これに加えて、約同数の人たちが、同じ問題を抱えて、家庭医を訪れているといわれます。
最近の世界保健機構(WHO)の報告によりますと、世界の十代の人たちと20代の若者の中の20人に1人は、毎年、ある種の性病にかかるそうです。米国の社会保険連盟からの報告によれば、合衆国とカナダで、「毎5秒に2人が性病にかかる」といわれます。
合衆国の伝染病予防センターは、なんと毎年、クラミジアの新しい患者が、400万人もいると推定しています。これらの感染のうち、かなりのケースが、不妊症とか慢性の骨盤の傷などの深刻な慢性合併症になってしまうことが見込まれます。
1989年1〜4月ケベックで実施された調査は、モントリオールに居住する394人の女性のうち1人が、エイズの原因になるウイルス、HIV(Human Immuno Deficiency Virus)に感染していると推定しています。ニューヨークの場合は、77人に1人という数字が挙げられます。
最近の研究によれば、合衆国では、2600〜3100万人が、現在、生殖器ヘルペスにかかっているといわれます。米国で、生殖器ヘルペスは、生殖器潰瘍の主な原因です。
性病の急増には、種々の原因があるようです。いくつかの研究は、非合法な薬物使用とある種の性病の多発に顕著な関係があることを示しているようです。その理由の一つに挙げられるのが、薬物の対価にセックスを提供するというパターンです。アルコール飲料の乱用といういつもながらの問題も、この問題に関係があるようです。酔っている場合、人々は、しばしば、知識に基づいた適切な健康管理上の決定ができないからです。
海外旅行が容易になったことも、性病の劇的蔓延のもう一つの原因となっています。過去においては、どちらかといえば、ある特定の地域に限られた性病の大発生は、しばしばありました。ところが今や、全世界が一定の危険にさらされるようになったのです。現在、蔓延している多くの性病は、世界中を旅行して性病の感染源になったり、行く先で接触する相手の性病に感染したりする人々によってもたらされます。エイズ・ウイルスの急速な蔓延がそのいい例です。もう一つの例は、抗生物質が効かないある種の淋疾の国際的蔓延です。この種の菌が世界のいくつかの特定地域で急増するのは、まさに、この感染体が辿った足跡を示すものです。
過去数年にわたって、世界の関心は、エイズ・ウイルスに集中するようになりました。そして、アフリカ特定諸国の深刻な状態が、注目の的になっています。何年か前、私は、アフリカのある国の小さな病院で働く機会を得ました。そのために、この地域における現在の保健管理の状態に深い関心を寄せるようになりました。最近までアフリカのある特定国の伝染病蔓延を研究していたある知り合いが、きわめて深刻な事例を報告してくれました。彼女の報告によれば、その国の首都で検査を受けた売春婦は、全員、エイズ・ウイルスに陽性反応を示したというのです。さらに、この地方で検査した一般女性の約70%も、同ウイルスに陽性反応を示したというのです。彼女の主張によれば、同国政府公式統計の数字は、実際の数字より、はるかに低いのです。この数字が高ければ、同国経済にとって非常に重要な観光産業を直撃するからです。そして、彼女の同国滞在の目的を政府が知るやいなや、彼女は、直ちに出国するよう「勧告」されたということです。
エイズは、アメリカとヨーロッパの主な都市に居住する20〜40歳代女性にとって最大の死因になっています。
現代、入手可能になった抗生物質のお陰で、淋疾、梅毒、クラミジアの感染は、当事者が症状に気づき、医師が正しい診断をする限り、効果的に治療できるようになりました。しかし、体内に侵入した微生物の撃退は可能でも、治療前の損傷が治ることは、普通、ありません。不妊などの重大な合併症は、その後何年にもわたる継続的治療を必要とするかもしれません。ですから、感染した疑いがある人は、緊急に治療を受ける必要があります。しかし、ヘルペス、エイズ、生殖器を犯すウイルス性の疣などの、各地で急増しつつあるウイルス性の性病には、今のところ治療法はありません。
本人が、自分がかかった性病のについて聞いたこともなく、感染の危険を意識していなかったことも、日常茶飯事です。
さらに、1988年以来、淋疾の感染が急増している確かな証拠があります。
コンドーム使用のもう一つの大きな欠点は、よく見られるウイルス性疾患の二例によって証明されます。(近年、産道ガンと密接に関連づけられた)人パピロマ・ウイルス(HPV)(Human Papilloma Virus)と単純ヘルペス・ウイルスは、コンドームによって完全に防御できると誤って信じられてきましたが、これらのウイルスは局部に限られて存在するわけではなく、しばしば、(膣、隠核、肛門と鼠頸部周辺などの)諸外部生殖器官の種々の場所と周辺にもみられます。性交は、一般的に、これらの部位の接触を意味しますから、コンドーム使用が、この種の微生物に対する防御に、ほとんど役立たないことがわかります。前述のように、感染者との一回の性交による感染の可能性が、少なくとも50%あることを考えると、この事実は見過ごせません。この点に関するコンドームの大失敗は、コンドーム使用が増加したにもかかわらず、人パピロマ・ウイルスと単純ヘルペス・ウイルス感染の爆発的増加が証明するところです。
特に、性的活動が計画的であるわけがない十代の人々に、コンドームを使いこなすことを期待するのは、考えられないほど非現実的なことです。私のこの主張は、コンドームの大宣伝にもかかわらず、性病が急増していることによって、裏付けられます。HIVは、男女を問わず悲惨な合併症を伴うようにみえる一つの例です。しかし、しかし、他の性病に関していえば、不妊、子宮頸管ガン、その他慢性の骨盤関係の(pelvic)問題を含む重大な合併症に苦しむことになるのは、しばしば女性の方です。ある女性家庭医が私に漏らしたことですが、「いろいろな合併症で、女性でなく男性の方が苦しむのであれば」コンドームによる見せかけの防御方針は、奨励されなかったはずだというのです。
世界保健機構は、この性病の急増振りに高い関心を示しています。1989年に、彼らは、毎年、世界の20人の若者のうち1人が、何らかの性病にかかるであろうと、予測しました。「治療方法のないエイズとその他のウイルス性性病は、行動パターン変化の推進という根本的予防法で対抗する他ない。HIVの大流行を食い止めるために、現在可能な唯一の方法といえば、公衆の教育しかない」というのがその結論です。
普通みられる性病は、バクテリア性のものには(A)淋疾(B)クラミジア(C)梅毒があります。ウイルス性のものにはD生殖器ヘルペスE人パピロマ・ウイルス(HPV)Fエイズ・ウイルス(HIV)があります。その他にG男性の場合は非淋菌系尿道炎(NGU)(Non Gonococcal Urethritis )、女性の場合は粘液化膿性の子宮頸管炎(MPC)(Muco Purulent Cervicitis)が挙げられます。ABCDEFは、男女に共通ですが、子供にも伝染することがあります。Dは単純ヘルペス・ウイルス(HSV)(Herpes Simplex Virus)、Fはエイズもしくは人免疫不全症(HIV)とも呼ばれます。