ビリングス排卵法による
NFPの実地調査
NFPに関するインド医学研究評議会特別調査団の研究発表
雑誌Contraception(人工避妊)1996年2月号から
世の中には、家族計画に成功しない夫婦、現代のどんな方法も使用しないけど、 次の妊娠まで少し間をおきたいとか、妊娠を避けたいと思っている夫婦がいます。彼らの中の多くが、NFPのような安全で確実な家族計画法を探し求めています。ただ一つの徴候、子宮頸管粘液というパラメーターに基づくビリングス排卵法こ そ、まさに彼らの求めているものです。インドで実施されている多センター実地調査は、この方法の頼りがいある効果を証明しました。その結果、21ヶ月にわたって100組の夫婦を対象にしたこの方法自体の失敗率は1.5± 0.3、使用上での失 敗は15.9± 0.8でした。この方法をその後も使用し続けた率は、6ヶ月後100人の被験者の中から88.3組、21ヶ月後52組でした。Contraception 1996 53: 69 74
キー・ワード — ビリングス排卵法、ピーク日、家族計画、カフェテリア、自律、行為の選択
導入
インド政府は、家族福祉計画を進歩させ、今世紀末までに総再生産率の人口学的ゴールを1にしようと努力しています。その結果、提供者と使用者の両方から間隔産児法に対する要望が高まりました。人工避妊実施率(原文では夫婦の保護率—訳者)は、本実地調査終了時点で、1980〜81年度の22.8%(間隔法2.7%、不妊手術20.1%)から、1986〜87年度の37.5%(間隔法9.6%、不妊手術27.9%)になりました。
それにもかかわらず、人工避妊実施率の改善(? — 以後すべての「?」を省略—訳者)は、国全体の総出生率に目立った影響を与えることができず、それはここ何年の間改善されませんでした1。
その反面、1980〜81年度と1988〜89年度に実施された家族計画連盟によるインドの全国調査で、それぞれ調査対象になった夫婦の7.2%と5%は、現代的家族計画法を使用せず、伝統的な自然に基づく家族計画を実施していました2,3。さらに、調査対象になった中のかなりの数の夫婦、それぞれ、15.0%と18.3%は、この調査の結果、家族計画のやり方について何も知らないことが判明しました。それだけでなく、副作用とか、不便とか、またはその他の理由で、現代的間隔産児法を途中で止めた夫婦がいました4−7。インドでの諸調査で判明したのは、一年で避妊リングと経口避妊薬を止めてしまう夫婦は、それぞれ、22 50%と30 60%にもなるという事実でした4。同様に、これ以上の子供は欲しくないけれど、どの現代的家族計画法も使用しない夫婦がいます。この種のグループに属する女性たちは、妊娠の危険にさらされています。わたしたちが所有する家族計画カフェテリアと人工避妊選択増加の努力は、あまりこれらの夫婦の役に立っていません。障壁、化学薬品を使用しない、文化的にも受け入れられ易い自然に基づく家族計画は、その本質的価値、効果、受容の容易さにもかかわらず、まだ休眠状態にあります。
ビリングス排卵法 (BOM)は、女性に妊娠の可能性を告げる子宮頸管粘液のパラメーターという一つのインデックスに頼る自然に基づいた家族計画法の中の一つです8。それは、女性に排卵後と排卵前の不妊期間も識別させます。生理周期の間にある排卵前の不妊期間中、卵巣エストロゲンレベルは低く、そのホルモンパターンが子宮頸管粘液に反映されるのです。ビリングスはこのパターンのことを基礎的不妊パターンと呼んでいます。周期期間の変化は排卵前の期間に起こります。膣から外性器に移動するとき、特徴のあるスベスベした感じがする粘液の存在は、性交が受胎につながる可能性が、もっとも高いことを示します。妊娠を先送りにするために、ビリングスは、以下のような、排卵前の規則を作りました。それはi)生理中に出血が激しいときは性交を避ける。ii)この期間が不妊期間であることがはっきり分かったら、各性交の間に一晩置く。iii)基礎的不妊期間を中断する粘液と出血があるとき性交を控える。性交を再開させる前に基礎的不妊期間の3日間性交を控える。粘液がピークに達した4日後の朝まで性交があってはいけない9−11。
過去20年にわたって、この方法については、いくつかの先進国、発展途上国で、何度か調査が行われてきました。ここにそれらの国を列記しましょう。太平洋地域諸島、オーストラリア、韓国、インド、アイルランド、合衆国、ニュージーランド、フィリピン、エルサルバドル、アフリカ、その他です。これらの調査は例外なく、非常に低い方法自体の失敗率と、高い継続率を示しました。しかし、インドで実施された初期の調査は12−14、わたしたちがさらに効果的で受け入れやすい人工避妊法を提供しようとしているより広く散らばる社会・文化的に複雑な地域を含むことのない、狭い地域に限られていました。この方法を教える期間はかなり長い期間に及ぶものでした(普通、3周期、ある多数の国にわたっての調査の場合はさらに3周期追加されました)。これらの調査結果の観察と追跡調査はわずか何回かの周期に基づくものでした。女性たちは、調査以前からすでにこの方法を習得した、前もって選ばれた人たちだけでした。同様な条件の下に行われた初期の調査の観察は、将来の利用者に理解を伴う選択と自由な選択を保証するカフェテリア方式を推進することを考えるインドの家族計画プログラムにとって役立つものと見なされませんでした。
これらの実地調査の結果、ビリングス排卵法が賞賛され、妊娠を達成するか避けるかを決定する際のその価値は認められたものの、この方法は、政府の保健と家庭福祉政策を影響して、政策に取り込まれるには到りませんでした。その際、特に問題になったのは、医師、研究者、政策担当者のレベルでNFPによる方法の効果と受け入れ可能性について議論が止まなかったからです。この議論による後退は、1960と70年代に、リズムカレンダー、中絶性交、禁欲などの方法が政府家族計画プログラムから消滅することに寄与したかもしれません。
その反面、教会とNGO機関は、自分たちのチャンネルを通じてNFP普及運動、訓練とサービスの提供を続け、この国で成功したと主張しています。専門家たちと研究者たちは、これをいつまでも無視することができませんでした。それは、彼らが、もっと多様な家族計画の選択を使用者たちに提供することが自分たちの義務であると信じ、家族計画法を知らない女性たちを助けることを希望しているからです。このような状況の下で、インド医学研究評議会は、最短期間(1生理周期)にビリングス排卵法の規則を学習するために動員できる文化的に異なる多数の人々を対象に、理想的期間にわたって、この方法の使用効果と受け入れられ易さについて実地調査をする必要が大であると感じました。それで、その目的の許に、NFP、公衆衛生、社会学、産婦人科、健康管理局などの学際グループの専門家たちからなるNFP特別調査団が結成され、本実地調査が計画され、完了を見ました。このようにして、構想も方法論も独自なこの研究は、現存する家族計画プログラムの条件と必要性を常に忘れないようにしながらも、異なる州の都市と農村に住む女性ボランティアを対象にすることになりました。その目的は、わが国の比較的大きな人口を調査して、その結果が慎重な政策決定を可能にすることです。
方法と物的手段
比較研究でないこの実地調査は、自薦があったウッタルプラデシュ、ビハール、ラジャスタン、カルナタカ、ポンディチェリの5州で実施されました。年齢15〜35才までの約500人の健康な、生理が規則正しい(26〜31± 5日)女性ボランティアの協力を得ました。彼女たちの夫たちが協力したのは言うまでもありません。彼女たちはそれぞれのセンターで、1987年1月から1987年9月にかけて登録しました。彼女たちは都市、農村両方に住んでいました。例外は、貧民窟を含むビハール州で、そこはどこまでも広がる農村地帯と言えましょう。各人は家族計画カフェテリアとビリングス排卵法の間隔産児法についての情報とカウンセリングを受けました。彼女たちは、生理周期中に起こる変化、粘液が分泌するときの膣周辺での感覚、もしくはあの乾いた感覚、粘液変化の識別、粘液のピーク日、その方法に関する規則、生理チャート/日記に周期中に観察された毎日の変化の記録法/マーキングについて学びました。彼女たちに提供されたのは、6× 8インチのカードと、3生理周期中の観察記録に必要とされるマークなどでした。(無学な女性も含めて)彼女たちは、観察が容易に、そして正しくできるために、アルファベットとシンボルを使用するよう指示されました。例えば、出血はB、しみはS、薄い粘液はO、濃い粘液は ゛、伸びのある粘液はX、粘液のピーク日(排卵)は ゛です。上記のチャートに記録された彼女たちの観察は、訓練を受けた教師たちと福祉ワーカーたちが、その後各周期毎に別のチャートに書き写しました。そして続行のインタビューの結果を書き添えました。その後、これら2つの書類がクロスチェックされ、ビリングス排卵法の実施が正確であったか、不正確であったが確定されました。
女性たちは、自分たちの生理の受胎可能期と不妊期間の始まり、周期中の子宮頸管粘液ピーク日を規則正しく観察しました。またすべての受胎可能期間中に実行した禁欲も記録しました。彼女たちには、第1周期中(この方法と、受胎可能期間/不可能期間と粘液のピーク日を理解するために子宮頸管粘液識別を学習する期間)完全に禁欲を守ることの重要性が教え込まれました。以後の周期中も、受胎可能期間の性交は避けるよう指示されました。この調査期間、現代避妊法が、万一に備えてとか、組み合わせで使用されることはありませんでした。
21ヶ月にわたって、2059人の女性ボランティアの調査がなされました。これは、32,957女性—月になります。データ分析のための締め切り月数も21ヶ月にしました。続行インタビューのために3ヶ月姿を見せなかった女性は、行方不明と見なされました。
排卵法学習のための最初の月の間と次の2ヶ月間、2週間に1回の割合で、これらの女性と野外もしくはクリニックで面談して、調査のためのビリングス排卵法サービスを提供しました。その目的は、女性たちがこの方法の規則をどの程度理解したか確かめ、粘液パターンに起こる変化のチャートを点検し、彼女たちの動機と配偶者の支持を強化することでした。彼女たちの自立が始まった4ヶ月目、そしてそれ以降は15、月1回の調査が続行されました。
女性たちの調査は種々の理由のために打ち切られました。以下がその理由です。打ち切りの時期は、以下の利用によって決定されました。
a. 現代的家族計画法への乗り換えのための打ち切り — その時期は他の方法を始めた日。
b.夫の不協力、出産の計画、その他の個人的理由による中断による打ち切り — ビリングス排卵法の規則が守られなくなった日。
c.この方法の理解不足による中断、つまり、3生理周期にわたる観察が不正確になされた場合の打ち切り — 最後の続行調査のための訪問日。
d.続行できなくなったための打ち切り、つまり、3生理周期にわたってその女性と連絡が取れないための打ち切り —最後に連絡があった日
妊娠は二種類に分類されました。第1、理論もしくは方法の失敗、つまり、正しく、そして常時、この方法に従っていた場合の妊娠(完全な使用法)。第2、使用者の失敗、つまり、粘液パターン識別をし損じた場合と/または識別がまったくできなくてビリングス排卵法の規則から離れてしまった場合の妊娠(不完全な使用法)。
合計した累積がい然数は、日常生活表のテクニックを使用して計算されました。意義テストはログ階級法を使用して1度の許容誤差のもとに、カイ自乗検定で算定されました。
理論的失敗もしくは方法による失敗率の算定のため、この方法を常時正しく使用した部分が分母と見なされました。正しく使用していなかった女性たちは、正しく使用していなかった部分を消去した後、この目的のために再参加したものと見なされました。
実際にあった使用上の失敗率を算定するために、この方法を(正しくもしくは間違って)使用していた間に起きたすべての妊娠(方法の失敗と使用者の失敗)を考慮に入れました。
また、その他の理由での中断率を算定するために、使用の全期間を分母として考慮しました。
特徴 | 平均±SD |
女性の数 | 2059 |
夫の年齢 | 30.5± 5.9 |
結婚完成時の年齢 | 17.9± 3.0 |
月当たりの性交数 | 6.7± 1.2 |
生存する子供の数 | 2.2± 1.5 |
% | |
未産婦 | 7.5 |
女性の教育程度 | |
文盲 | 32.2 |
読み書き可能 | 7.5 |
水準 VIII以下 | 24.0 |
IX X | 17.6 |
X以上 | 18.7 |
職業 | |
主婦 | 87.7 |
労働者 | 4.7 |
教師 | 2.7 |
その他 | 4.9 |
家族の型 | |
核家族 | 57.7 |
複合家族 | 42.8 |
宗教 | |
ヒンズー教 | 87.7 |
回教 | 9.6 |
キリスト教 |
1.8 |
シーク教 | 0.5 |
その他 | 0.3 |
|
自覚と使用状況 | % |
家族計画法を自覚している | 77.0 |
間隔産児法を使用した | 23.8 |
IUD | 5.2 |
他の一般/伝統的方法 | 2.4 |
結果
プロフィール
ビリングス排卵法を受け入れた女性の平均年齢は、26.2± 4.8才でした。月当たり性交数は6.7± 1.2でした。この方法を受け入れた女性の中、32.2%は文盲、7.5%はやっと読み書きができる程度でした。女性たちの大部分(87.7%)は、主婦もしくは無職でした。家族の型に関しては、これらの女性の大部分は、平均2.5± 1.5いる核家族に属していました。彼女たちの中かなりの部分(7.5%)が未産婦でした(表1)。生理周期と生理出血の平均値は、それぞれ、28.5± 3.2日と4.4± 1.2日でした(表2)。
自覚/家族計画法の継続
女性たちの大部分は、家族計画が政府の家庭福祉プログラムの提供によるものであることを意識していましたが、約4分の1だけが、以前に間隔産児の方法を使用していなかったことを報告しました。一部の女性たち(2.4%)は、伝統的/自然に基づく方法を使用していました。また、かなりの数になる女性たちは、夫がコンドームを使用することを報告しました(表3)。
継続率
高率の継続率(88.3%)が6ヶ月目の終わりに見られました。1年目の終わりの継続率は76.0%でした。特に農村地方で、1年目の終わりに継続率がかなり低下する傾向がありました。それと比べると、都市部では、期間の長短にかかわらず、継続率が高いのが特徴でした(P> 0.01、表4)。
継続率 | 0 6 | 7 12 | 13 18 | 19 21 |
調査対象女性数 | ||||
都市部 | 1179 | 1047 | 912 | 781(600) |
農村部 | 768 | 768 | 630 | 467(267) |
合計 | 2059 | 1815 | 1542 | 1248(867) |
女性/月による使用数 | ||||
都市部 | 6600 | 12521 | 17485 | 19526 |
農村部 | 4909 | 9058 | 12382 | 13431 |
合計 | 11509 | 21579 | 29867 | 32957 |
継続率 | ||||
都市部 | 89.0 | 79.0 | 77.0 | 59.5 |
農村部 | 87.3 | 72.0 | 54.0 | 41.1 |
合計 | 88.3 | 76.0 | 62.0 | 52.0 |
失敗率 | ||||
方法の失敗 | 0.7± 0.2 | 1.1± 0.3 | 1.2± 0.3 | 1.5± 0.3 |
使用上の失敗 | 4.1± 0.4 | 10.5± 0.7 | 14.1± 0.8 | 15.9± 0.8 |
失敗の合計 | 採用者数 | パーセント± SE |
居住地 | ||
都市 | 1179 | 13.4± 1.0 |
農村 | 880 | 19.6± 1.4 |
年齢 | ||
25歳以下 | 1090 | 18.6± 1.3 |
25歳以上 | 969 | 11.9± 1.1 |
生存子数 | ||
2人以下 | 1258 | 16.3± 1.1 |
2人以上 | 801 | 14.1± 1.3 |
教育程度 | ||
文盲 | 663 | 16.8± 1.6 |
識字可 | 1396 | 14.8± 1.0 |
P< 0.01 |
都市 | 農村 | 合計 | |
理由 | パーセント± SE | パーセント± SE | パーセント± SE |
夫の非協力 | 1.5± 0.4 | 5.0± 1.0 | 3.0± 0.4 |
理解不足 | 0.4± 0.2 | 0.2± 0.2 | 0.3± 0.1 |
妊娠の予定があった | 4.0± 1.0 | 7.0± 1.1 | 5.0± 1.0 |
妊娠 | 13.4± 1.0 | 20.0± 1.4 | 16.0± 1.0 |
他の方法に変更 | 17.3± 1.2 | 24.3± 2.0 | 20.1± 1.0 |
その他 | 0.4± 0.2 | 1.1± 0.4 | 1.0± 0.2 |
追跡調査不可能 | 12.0± 1.1 | 23.6± 2.0 | 16.3± 1.0 |
方法自体の失敗
方法に正しく従っていたにもかかわらず、調査期間に計画外出産をした女性数は21人でした。ビリングス排卵法を正しく使用していた女性に見られた方法上の失敗率は、21ヶ月の調査期間の終わりに、1.1± 0.3%でした。
使用上の失敗
調査で判明したように、この方法を正確に、もしくは不正確に使用している間のすべての計画的妊娠を数に入れても、総妊娠率は12ヶ月の終わりで10.5± 0.7%、21ヶ月目の終わりに15.9± 1.3%でした(表4)。
居住地区その他の理由による使用上の失敗
都市部で、21ヶ月の終わりの妊娠数に見られる失敗率(13.4± 1.0%)は、農村部の率(19.6± 1.4%)と比較して、かなり低いことが分かります(P< 0.01、表5)。
25歳以下の女性たちの失敗率は18.6± 1.3%でした。これは25歳以上の女性たちの失敗率(11.9± 1.1%)と比較すると、統計学上顕著な差(P< 0/01)であるといえます。
使用上の失敗率と生存している子供たちの数と教育程度の間に関連はないようです(表5)。
他の理由による継続中止の理由
調査の結果、0 12ヶ月、及びその他の期間に関しても、約24%の女性は、ビリングス排卵法を継続することができまなかったことが判明しました。調査期間中、この方法を続けることができなかった理由はいろいろあります(表6)。しかし、その中でも主なものは他の家族計画法への変更でした(21.1± 1.0%)。次は、妊娠(16.0± 1.0%)でした。これら二つの理由による中断は都市部と比較して農村部でかなり
高いことが分かりました(P< 0/01)。
その他、調査中に追跡ができなくなった率は16.3± 1.0%でした。
論考
本調査では、女性ボランティアにたった1生理周期だけビリングス排卵法の規則を教えました。その後、21ヶ月の追跡調査をして、ビリングス排卵法の受容率と使用—効果度を研究しました。この方法を正しく使用し続け、粘液パターンと性交の頻度が分かるように日記を付けることを習得した上で、継続した女性たちの能力があったということが意味するのは、大部分の女性たちが、正しく粘液のピーク日を識別することができるということでした。
21ヶ月後の合計15.9%の失敗は、そのほとんどが使用者に問題があったので、それほど問題にはならないように思われます。これらの失敗は、主に、使用者の行動パターンに関係がありますから、訓練のやり方、動機づけと配偶者の協力を改善することによって、これらの理由による失敗は最小限に押さえることができるようになるでしょう。方法上の比較的高い効果(1.5%の失敗率)と、その継続率(52%)を考慮するとき、この方法はインドの家族計画プログラムにとって直接的な意味があることが、はっきり分かります。
1〜2年にわたって行われた、ビリングス排卵法に関する、インド国内での多国籍チームによる研究、合衆国、オーストラリアでの調査などで判明した、方法上の低い失敗率(2.8、1.3、2.9%)と比較して見ても、本調査での失敗率は、大体同じぐらいです13,16,17。
本調査で判明した使用上の失敗率(21ヶ月後で15.9%)は、それぞれ1年、2年、2年を少し越える期間になされたビリングス排卵法に関する他の調査が報告する19.6、22.7、32.1%などの数字と比較すると、かなり低いといえるでしょう13,16,17。
中断を分析すると、他の家族計画法への変更が主な理由のように見えます。間隔産児を希望する、もしくは妊娠を希望しないけれど不妊手術のような永久的方法を希望しない女性たちの間では、これが普通の慣行であるようです。ですから、21ヶ月の期間にわたる現在の率(20.1± 1.0%)は、ビリングス排卵法がインドの家族計画カフェテリアのもう一つの選択肢としての意義を減じるものではありません。さらに、何百万という人たちが薬品、障壁、外科手術などの方法に頼らないで受胎をコントロールするためにも、意義があります。
インドでは、いくつかのプログラム上、また心理的、社会的の理由で、人工避妊薬の普及は芳しくありません。それで、17%の夫婦は、家族計画が思うようにできません。家族計画のためにいろいろな人工避妊法が、もっと利用可能になるよう計画されています。既存の家族計画法に並んで、自然に基づくビリングス排卵法も安全なので、人々に利用されるよう提供できるでしょう。この方法の大きい効果は、避妊リング(使用者1〜3%)、コンドーム(1〜2%)、ダイアフラム(2%)などの現代的人工避妊法の(理論的)失敗率に近いことから、もっとも良い選択のように見えます。(使用上の)失敗率は:コンドーム使用者の失敗率(4〜25%)、ダイアフラム使用者の失敗率(4〜25%)とそう変わりません19。その継続率も、本調査で観察されたように、プログラムという点から見ると非常に良い成績であると言えます。
このように、自然に基づく家族計画ビリングス排卵法は、種々の社会・文化的環境にある夫婦にとって、実行可能かつ受容可能な方法です。訓練期間を除くと、この方法には、提供する側にとっても、利用者にとっても費用がかかりません。この方法は恐怖心理とか副作用の心配がありません。これは、利用者の自主性による、文化的にも受け入れやすい方法です。ですから、この方法は、一般的には発展途上国、特にインドに、利益をもたらすはずです。
謝辞
わたしたちは、本調査の草稿段階の計画案準備に尽力し、計画スタッフと調査リーダーに訓練を施し、彼らとインド医学評議会に、無償でビリングス排卵法の文献を提供して下さったマドラスSERPACのシスター・カタリナ・ベルナルド(医学博士)に 心から感謝いたします。シスターの全面的支持なしに、本調査を成功裏に完結することはできなかったでしょう。
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Division of Reproductive Health and Nutrition, Indian Council of Medical Research (ICMR), Anbarl Nagar, New Delhi 110 029, India
Investigators: II. Dhargava, J.C. Bhalia,f L.Ramachandran, f P. Rohatgi & and A. Sinha# Coordinating Unit: H.M. Saxena, K.K. Singh, P.Sethi, and A. Mathur.
Project Coordinators: R.N. Gupta and B.N. Saxona 'SMS Medical College, jaipur: Indian Institute of Management, Bangalore: Centre for Research in Health, Dindigul: & GSVM Medical College, Kanpur; and #Patna Medical College, Patna
Name and address for correspondence: Dr. Badri N. Saxena, M.D., Chief, Division of Reprodouctive Health and Nutrition, Indian Council of Medical Research, Post Box No. 4911, Ansan Nagar, New Delhi 110 029 Tel: 91 11 68507 13; Fax: 91 11 6868662
Submitted for publication February 14, 1994
Revised September 4, 1995
Accepted for publication November 7, 1995
c 1996 Elsevier Science Inc. All rights reserved.
655 Avenue of the Americas, New York, NY 10010