家族計画講演会で世界各地を飛び回るビリングス博士夫妻
ジャパン・タイムス・日曜インタビュー 1959年10月8日
(佐久間秀子)
 
オーストラリア人のエヴェリン・ビリングス博士と、同じく医師である彼女のご主人ジョン・ビリングス博士は、1970年以来自然に基づく家族計画を推進し、その理解を深めるため世界各地を旅してきました。
 
粘液法としても広く知られる自然に基づく家族計画技術の開発者であるビリングス博士夫妻は、先月来日して、11の都市で講演会を開きました。正式には世界保健機構からビリングス排卵法と命名されたこの技術は、排卵時には粘りけが少なくなる子宮頸管粘液の特徴を女性が感じ取ることに、その基礎があります。
 
この方法は、完全に自然に基づくもので、器具等を使用しません。この技術を、他の自然に基づく家族計画と比較したとき、一つの利点があります。この方法の推進者によると、それは、女性の生理周期に基づかないために、生理不順の女性にも使用できるという点です。
 
液体、もしくは「受胎可能期間」の徴候である粘液は子宮頸管線によって分泌され、普通、排卵の3日前から観察されます。妊娠を避けたい人たちはこの期間禁欲しなければならない、と71才になるリン・ビリングス博士は言います。彼女によれば、この方法は、指示に従う限り99%の成功率があります。
 
自分のことを知りなさい
 
彼女によると、この技術は、妊娠したい人たちのためにも有効です。彼女は、人間の体の機能と周期習得の重要性を強調します。「わたしたちは『自分のことを学び、理解し、尊敬なさい。赤ちやんを愛し、赤ちやんに対する責任を自覚しなさい』といつも言っています。わたしたちの方法は、夫婦の協力を促します。それはいい結婚と、子供たちにとっては安定した幸せな家庭を意味します。家庭生活の安定、これこそ世界が、現代、必要としているものではないでしょうか」と自分も小児科医であるリン博士は続けます。
 
リン博士は、経口避妊薬と障壁法による人工避妊は、若い人たちに性活動を奨励し、これが望まれない妊娠と人工妊娠中絶の原因になり得るし、また、ときには不妊症と性病伝播の原因になると信じています。 彼女によると、ビリングス排卵法は、多数の発展途上国と共産主義諸国も含む世界各地の100以上の国に喪入されています。さらに、オーストラリアには受胎能力について教育する100以上のセンターがあります。
 
5OOO万人の使用者
 
1987年の推定によれば、世界各地で5000万組以上の夫婦が、この方法を実行しています。この方法についての本は、日本も含めた14ケ国で出版されています。
 
1975年に死去した日本の医師、研究者、生殖生理病理学者、荻野久作博士は1924年、後に自然に基づく家族計画に適用される理論を発表しました。荻野博士はこの分野の先駆者であると考えられています。
 
しかし、日本では、ビリングス排卵法による自然に基づく家族計画がまだ普及していません。これは、この夫婦チームが、その講演旅行によって変革を目論んでいるところです。
リン博士によると「この方法をラジオによって宣伝するわけにもいきません。テレビなどでの宣伝にお金をつぎ込むほどの余裕もありません。わたしたちに、売るものは何もありません。子宮頸管粘液は空気のようにただだからです」。
 
ビリングス博士は日本が、他の国のように避妊ピルを受け入れなかったことは、幸運であったと考えます。一例を挙げると、オーストラリアでは、このような避妊ピルの副作用で、多くの若い女性が不妊症になつてしまったと、彼女は嘆きます。
 
世界的傾向
 
現在の世界的傾向は、自然に基づく家族計画であって、技術に頼る人工避妊ではないと、ビリングス博士は主張します。さらに、このような方法は宗教的な人にとってだけでなく、そうでない人たちにも受け入れられている、と彼女は言います。
 
ビリングス博士自身も、1組の双子を含んで、9人の子供たちの母親です。「時として、『あなたたちには9人もの子供がいるんだから、あなたたちの方法はあまり効き目がないみたい』などと言ってわたしたちをからかいます。人々は、わたしたちが9人もの子供を欲しかったのだとと、なかなか思ってくれません。しかし、わたしたちは欲しかったのです」。
 
日本滞在中、彼女はこの方法についてもっと知りたがる多くの日本人たちの熱狂的反応に驚かされました。「赤ちやんに対する愛と家庭の幸福は、日本とわたしたちがこの方法を教えてきたすべての国に対する、わたしたちの主な関心事です」と彼女は語ってくれました。

(ビリングス博士夫妻は、3人の養子を含む9人の子供たちに恵まれています。1996年現在、孫の数は37人。)
 
ビリングス夫妻に関する資料(本人提供)
 
ジョンとエヴェリン・ビリングス博士夫妻は、およそ100ケ国で共に働いてきました0その中の多くの国、特に貧しい国には、過去数年にわたって、数回滞在しています0これらの国々は東西ヨーロッパ、中近東、アジア、アフリカ全土にわたり、パキスタン、インド、中華人民共和国、その他のアジア諸国と太平洋諸島、北米、中南米諸国各地を含みます。