補遺 その四

以下は、心のともしびYBU本部と福岡カトリック・ファミリー・センターの好意で、「素晴らしいNFP知っていますか」から引用しました。

ビリングス排卵法
聖母カテキスタ会 吉永ユリ

ジョン・ビリングス博士と、同じく医師である奥さんのリン・ビリングス博士は、排卵の日を示す子宮頸管粘液の観察に基づく自然にかなった家族計画法(BOM)を教えています。この粘液の観察法を学んだ女性は自分が受胎可能であるか、そうでないかを知ることができます。出産の後とか、閉経が近い場合、生理周期の長短・規則不規則にかかわらず、女性はビリングス排卵法に頼って、神様がお望みでさえあれば、自分が望んだときに受胎することができます。

排卵法と頸管粘液について

排卵が近づくと、独特の性質の粘液が、子宮頸管から分泌し始めます。子供を生む能力があるほとんどの女性は、生理周期の一定期間中、生理の出血以外に、下りものがあることに気付きます。この粘液が、子宮頸管から分泌される子宮頸管粘液です。この粘液には、生理周期の進行に対応して性質が変化する特徴があります。

不妊型頸管粘液・・・この粘液は、排卵がまだかなり先の時、あるいは排卵が終わった後は、のりのように濃く、子宮口の周りに付着していて、普通の場合、膣口に下りてくることはありません。従って、膣口付近は乾いた感じがします。しかし、時として、乾いた感じではなく、何かの理由でべたつきを感じることも、まれにはあります。この粘液は、精子が子宮内に進入するのを妨害します。この粘液の持つ細かい網の目状の構造のために、精子は子宮頸管の中に進入することができないのです。

受胎可能型頸管粘液・・・排卵が近づくとこの粘液は、次第に、透明で、ツルツルして、伸びのある、卵の白身のように水っぽいものになります。それが膣口に下りてきて、膣口は湿った、あるいは、濡れたような感じになります。この受胎可能型頸管粘液は

1 排卵が近いことを予告する兆候です。
2 精子はこの粘液がなければ、数時間で死んでしまいますが、この粘液の中だと3〜5日間生存できます。
3 正常な精子と異常な精子とを振るい分けます。
4 精子が卵子に到達するために必要です。微小な精子が子宮頸管と子宮の中を通って、卵管の中にいる卵子にたどり着くのは大変なことですが、この受胎可能型粘液がそれを助けます。
このように、頸管粘液は、妊娠するかしないかに、直接関係している兆候です。ですから、受胎調節をしたい場合には、この粘液によく注意すればよい、ということになります。

排卵法(ビリングス・メソッド)の特徴

1 非常に単純な方法ですが、最新の医・科学知識が基礎になっています。
2 排卵の時期が分かり、いつが受胎可能日か不妊日か、確実かつ簡単に識別でき、妊娠しにくい夫婦には、妊娠するために役立ち、妊娠を避けたい夫婦には、自然な受胎調節が可能になります。
3 夫婦間のコミュニケーション、協力、配慮を深めるのに役立ち、結婚生活の基礎である夫婦愛が深まります。
4 妊娠も受胎調節も、夫婦の共同責任です。自然な受胎調節を実行する夫婦は、全く対等に責任を分かち合います。
5 夫婦の性生活が常に自然に行え、全く無害です。
6 薬、器具などを使用する人工避妊の場合、副作用の被害者は女性ですが、この点でも女性は救われ、平等な立場に置かれます。
7 禁欲期間の存在は、性交以外の方法で愛情を深めるのに役立ちます。また、禁欲期間外の性生活をも新鮮なものにします。
8 観察のために器具、薬品を必要としないために、経費が一切不要です。
9 女性としての健康管理や、心身の成長、女性らしさを形成していく上で、また、正しい性教育のためにも大切な役割をもっています。
10 離婚率が極端に低くなります。米国の統計によると、自然な受胎調節を実行する夫婦の離婚率は1%に満ちません。

ビリングス博士ご夫妻は、この方法を受胎調節に適応する道として、長年、その研究と指導にたずさわっておられます。

頸管粘液の変化について

排卵が起こる典型的な周期では、生理が始まり4〜5日経つと出血が止まり、膣口は出血も下りものもない、乾いた感じになります。次に、その周期で排卵が起こる場合、その日は前日までのように乾いていないと感じる日が来ます。膣口を拭いてみると、何か粘液が付着するかもしれません。
乾いていないと気づき始める最初の頃、粘液の量は少なく、ベトベトしていることが多いものです。しかし、日が進むにつれて、次第に、粘液の量が増え、その形状も透明で、スベスベとして、ちょうど卵の白身のように、水っぽくなります。また、伸ばしてみると、長く、細い糸を引く、伸びのある性質に変化します。

そして、また何日か経つと、前日と違って、粘液は、ベトベトしたものに代わるか、全く止まったことに気付きます。この変化に気付いた前の日、つまり、受胎可能型粘液を観察できた最後の日のことをピーク日と言います。

排卵は、ピーク日か、翌日、もしくは翌々日に一回だけあります。ピーク日は、その周期の中でもっとも妊娠しやすい日のことです。ピーク日で大事なのは、粘液の量でなく、その性質なのです。ピークが過ぎると、ベトベトした粘液が、一〜二日、出ることもあります。あるいは、何もなく、乾いていると感じるかもしれません。いずれにしても、普通、やがて粘液が止まり、膣口は、再び乾いた状態になります。ピークから次の生理までの日数は、一二〜一六日で、大体、だれでも一定しています。ですから、ピーク日が正しくつかめたかどうかは、次の生理がピーク日から数えて、約2週間後に来るかどうかによって確認できます。以上が自分に当てはまるかどうかは、女性が、実際に自分の体を観察して、記録をつけるとよく分かります。

頸管粘液の観察法

1 粘液がある時とない時、膣口周辺で自分がどのようにその違いを感じるかが鍵になります。普通の日常生活の中で、外陰部の感じが、どのように変化していくかを注意深く識別することです。そのために特別なことをする必要はありません。ただ、そこに注意を向けるだけで分かるようになるものです。
2 粘液の有無は、そのときの外陰部の感じで分かります。粘液がある場合には、その透明度、色、伸び具合、濃さ、水っぽさなどを観察します。こうして、粘液の状態と外陰部の感じを関連づけます。

実際の観察は、一日何回か、外陰部の感覚が乾いた感じか、湿った感じか、あるいは濡れた感じかなどに注意を向けることによってなされます。このために仕事の手を休める必要はありません。意識を外陰部の感覚に向けるだけです。回を重ねる中に、自然に意識できるようになるでしょう。

頸管粘液の観察を生かして

妊娠したい場合は、妊娠を可能にする頸管粘液がある期間を積極的に利用します。妊娠を避けたい場合、妊娠可能期間(普通、六〜八日間)は禁欲します。この規則をしっかり守れば、妊娠することは非常にまれです。WHOその他の調査から、排卵法には生物学的に言えば、九七〜九九%の成功率があり、また、ほとんどの女性が、受胎可能状態と受胎不可能状態に対応した粘液様式を、迅速かつ正確に識別できるようになることがわかりました。少なくとも九〇%の女性は、一回目の講習を受けた後、識別可能な観察記録を作成でき、三回日の講習までには、少なくとも九四%が同様の観察記録を作成できることが、WHOや類似の調査によって分かっています。どんな薬も器具も必要としないこの排卵法は、副作用や、後遺症の心配もなく、経済的な負担もありません。さらに、夫婦愛が以前にもまして深まることを体験するでしょう。

排卵法(ビリングス・メソッド)の結び

自然の恩恵を生かした排卵法(ビリングス・メソッド)は、生命の尊さ、男性であること女性であること・・・つまり、性の尊さの上に立った人間としての品位と責任のある愛の営みのために非常に優れた方法です。特に、夫婦のコミュニケーションが大切で、具体的には、妻が自分は受胎可能期にあるのか、不妊期にあるのかを夫に伝えます。その伝え方は、各夫婦が独自の方法を考案しています。また、夫は妻が、今、生理周期のどの時期にあるのかを配慮します。このようなことを通して、夫婦間の思いやり、信頼、愛、感謝、受容、赦し合いなどの心は深まり、子供たちは無意識のうちにも、自分の性を良いものとして受け入れながら育って行くでしょう。

新しい生命は根元的には、神からのものですが、大体の方向として、夫婦は、今、妊娠を望むか、それとも妊娠をもう少し先に延ばしたいのかを話し合う必要があるでしょう。このようにして、夫婦は、神が自分たちを通じて、新しい人間を創造なさるとき、神のパートナーとしてその創造のみ業に参与することになります。

最近、医学は驚くほど発達しました。お陰で、わたしたちは、外部から影響を受けながら、一人の人格として育っていく、胎内の赤ちゃんの様子も詳しく知ることができます。赤ちゃんにとって良い環境とは、望まれて受胎し、互いに信頼し、愛し合っている両親に生まれ、喜び、祝われ、愛されながら、平和に育てられるということです。また、多くの可能性と能力を持ち、受胎の瞬間から驚くほどの速さで成長する胎児のためにも、母親が少しでも早く妊娠の事実を知ることも大事です。

排卵法は、人間としての尊厳から避妊具や避妊薬、不妊手術などに抵抗のある夫婦にも、見事な解決を与えてきました。今では、洋の東西に関係なく、工業先進国、発展途上国でも、また文化、宗教、国民性までも乗り越えて、静かなブームとなって世界の隅々にまで広がりつつあります。一七ケ国語余に訳された「ビリングス・メソッド」の本は、一九九五年末までに一〇〇万部以上売れ、ある国ではベスト・セラーにまでなっているほどです。

このように、ビリングス排卵法による自然に基づいた家計計画は、単なる人工避妊のための一技術ではありません。むしろ、結婚とは何か、夫婦愛とは何か、家族とは何かを大事にする生き方です。生命と性が大切にされることによって、夫婦の絆と愛、親子の絆と愛が強められます。この方法を取り入れた夫婦は、一人の男性、一人の女性としての受容と自立性、責任感の上に、明るい家庭を築いていきます。既婚女性は言うまでもなく、女の子が、若いときからこの方法を身につけることは、結婚の準備、健全な性教育のためにも、非常に役立ちます。ビリングス排卵法を身につけた人たちは、まわりの人々にもこのことを伝えています。(以上は、心のともしびYBU本部発行「素晴らしいNFP知っていますか」からの引用)

ビリングス排卵法がもたらしたもの

結婚一〇年の夫婦

わたしたちは自然な家族計画ビリングス排卵法を知り、実践する中に、夫婦のかかわりの大切さに気付き、相手を思いやる心も自然に表せるようになりました。それは、子供たちにも広がって、家庭が本当に明るく、平和になりました。この方法は、単なる避妊法ではなく、愛による夫婦の生き方の選択だと思います。夫婦が真に深いかかわりを持って成長するようにとの、神の強い愛と願いを感じて、感謝でいっぱいです。

結婚一二年目の主婦

無脳症の子供は、難産の末、数時間で天国に召されました。わたしは、お産の苦しみと子供を失ったショックで、上の二人の子供に全く関心が向かず、放心状態で眠れない夜が続きました。妊娠への恐怖から、セックスは怖いと思い続けていました。こんな時、ビリングス排卵法に出会い、再び主人を迎えることができ、子供たちも生き生きしてきました。以来、排卵法は友人にも機会ある毎に勧めてきました。新婚のカップルにも大変喜ばれ、また、三組の夫婦には待望の赤ちゃんが生まれました。

独身女性

わたしはビリングス排卵法により、女性である自分を感謝と誇りをもって受け入れるようになりました。生理のリズムの中で、自分が生命を宿すことができる神秘体であることに気付き、生命の尊さや母親になることへの愛と責任の重さも実感します。望まれた受胎が子に対する母親の愛と責任であり、性は大切にすべきだと思います。わたしはこの方法が、独身の今、身に付いたことに、心から感謝しています。女性は若いときから、是非この方法を身につけて欲しいと思っています。

結婚準備セミナーに参加したカップルの声

ビリングス排卵法をもし聞くことがなかったらと思うと怖いくらいです。今日からすぐ観察します。そして、友人、後輩にも是非伝えて、間違った知識、方法を直したいと思います。

この方法をもっと多くの人が理解できたらよいと思います。学校の保健や性教育にもこの方法を採り入れたら、きっと若者は性を大切にするようになるでしょう。

この方法を知り、生命誕生可能な日が限られているのに驚きました。自然な仕組みに、人工的な害のあるものを組み入れることなく、二人のために、そして未来の子供たちのためにも、よりよい健康な生活ができるよう努力したいと思います。

女子高校生の感想

ビリングス排卵法を学び、女性の身体の仕組みについて多く知ることができた。早速観察を始め、命の重みを受け止めて、自分の性を大切に、女性であることを誇りにして生きたい。

わたしはこの方法のことを忘れずに、将来は自分の子供にもしっかり教え、きれいな社会で生活できるようにしてやりたい。

わたしの体は自分だけのものではなく、新しく生まれてくる生命の「家」であることを忘れないようにしたい。