1501〜1508:第4総会 聖書と聖伝について

(1546年4月8日)

a)聖書と受けるべき伝えについての教令

1501(783)聖霊において合法的に召集された、この神聖にして侵すべからざるトレント世界教会会議は、誤謬を取除き、教会の中に福音の純粋性そのものを保存するため、常に次のことを目前に置き、すなわち、かつて預言者たちを通して聖書の中で約束されしものを、天主の御子なる私たちの主イエズス・キリスト御自身の口によって公布し給い、次にご自分の使徒たちを通して、すべての救いの真理と道徳律との源泉として「すべての被造物に述べ伝え」(マルコ16・15)られるように命じ給うたということを念頭に置き、更には、キリスト自身の口から使徒達らが受けた、または聖霊の口述によってその使徒達自身からあたかも手から手へ渡すようにして伝えられたこの真理と規律とは、我々にまで辿り伝わってきたが、それらは、書かれた書物と、書かれていない伝承とに含まれていることを知り通し、正統信仰を持つ教父たちの模範に従って、旧約と新約のすべての書物を、唯一の天主が両聖書の著者である故に、そしてまた同じように、キリストによって口授されたものであれ、聖霊が書取らせたものであれ、カトリック教会において絶えず受継がれて保存されている、信仰或いは道徳に関する伝承そのものを、同じ敬虔の愛情と尊敬の心をもって受入れ、尊ぶものである。公会議は、誰一人として疑いが起こり得ないように、この公会議によって受け入れられた聖なる書の目録がこの教令に書き加えられるべきであると判断した。受け入れられた聖なる書は以下の通りである。

1502(784)  旧 約 聖 書 は、モーセの5書、すなわち、創世、脱出(出エジプト)、レヴィ、荒野(民数)、第2法(申命)、ヨシュア(ヨズエ)、判事(士師)、ルト、列王1、2(サムエル上、下)、列王3、4、歴代上、下(年代記前後)、エスドラ、ネへミヤのと言われる書、トビヤ、ユディト、エステル、ヨブ、ダビドの150詩篇、格言(箴言)、コへレット、雅歌、知恵、シラ(集会)、イザヤ、エレミヤ(哀歌を含む)、バルク、エゼキエル、ダニエル、12の小預言者達の書、すなわち、ホゼア、ヨエル、アモス、アブディア、ヨナ、ミケア、ナホム、ハバクク、ソフォニア、ハガイ、ザカリア、マラキア、マカベオ前、後である。

1503 新 約 聖 書 は、マテオ、マルコ、ルカ、ヨハネによる四つの福音書と福音記者ルカによる使徒行録、使徒パウロの14の書簡(ローマ、1、2コリント、ガラチア、エフェソ、フィリッピ、コロサイ、1、2テサロニケ、1、2チモテ、チト、フィレモン、ヘブライ)、使徒ペトロ2書簡、使徒ヨハネの3書簡、使徒ヤコボの書簡、使徒ユダの書簡、使徒ヨハネの黙示録である。

1504 もし誰かが、以上の書物を、完全にその部分を全て残らず、カトリック教会において読まれるのが慣わしとなっている古いラテン語のブルガタ版にある通り、聖なる正典として受入れず、上記の伝承を知りながら故意に軽視したとすると、彼は排斥される。

1505 従って、すべての人は、この公会議が信仰宣言の基礎を置いた後どのような順序と道によって進むのであるか、また教義を確認し教会内において道徳の建て直すにあたって、どのような非常に力強い証言と方法を使うのかということを理解するように。

b)聖書のブルガタ版と聖書解釈の方法についての教令

1506(785)  とりわけ、同じ聖なる公会議は、もし出回っている聖書の全てのラテン語版の中でどれを正真正銘とすべきかを示したら、天主の教会にとって少なからぬ利益をもたらすと考え、何世紀にもわたる教会での長い使用によって承認されたこの古いブルガタ版それ自体を公の朗読、論議、説教、解説における正真正銘版とすることを決定し、宣言する。そして、たとえどのような口実によるものであっても、誰一人としてこの版を敢えて拒否したり、または拒否しようと企むことのないように(DzS3825参照)。

1507(786)  さらにまた、勝手気ままな意見を抑制するために、次のことを定める。すなわち、誰一人として、キリスト教の教義の発展に関わる信仰と道徳に関する事柄について自分の判断に頼って、或いは、聖書の真の意味と解釈を判断するのは教会の職務であるが、その聖にして母なる教会が昔から支持し今も取っているその意味に反して自己流の意味に聖書を曲げて解釈し、或いは、たとえそれが決していかなる時も一般に公開されないものであったとしても、教父たちの一致した見解に反して敢えて聖書を解釈してはならない、と。

1508:しかし、印刷業者たちの側にも規制を与えること、これは相応しいことであるが、を望み、公会議は、聖書を特に古いヴルガタ版が将来、もっとも適切なやり方で印刷されることを、更には、聖なる教義に関することを扱う書物はいかなるものであれ、まず教区長の検査と承認を受けたものでない限り、著者の名前無しに印刷したり印刷させたりすること、またはそれらを販売したり所有したりすることは、今後不法であると、定める。