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ニューイングランドの人口減問題

アラン・グリーンスパン氏の提案は移民の増加

スコット・ワインイバーグ

PRI's Weekly Briefing

『フマネ・ヴィテ』研究会 成相明人 訳

一昔前から人口制限を旨としていたニュー・イングランド地方は、皮肉なことに現在労働力不足に悩まされ、より多くの移民を迎え入れるか人口減の社会・経済的諸結果を受け容れるかの二者択一を迫られている。実は「ベビーブーム」の再来というもう一つ解決があるのだが、これは頭にないようである。

一九九九年十二月十六日

人口問題研究所所長スティーヴ・モーシャー

PRI-人口研究所発 — 国連人口基金は一九九九年十月十二日つまり世界人口が六十億を突破した日に関して、人口過剰の神話で世の人々を脅かすことを企んでいる。国際家族計画連盟と共謀して彼らは国内外で家族計画実施を押し進めるために、さらなる財政支出をワシントンに迫っている。

六十億人目の赤ちゃんに関連するもっとも重要な点、つまり世界人口が倍加する見込みが皆無であることに関して、彼らは意識的に触れようとしない。発展途上国に人口問題がもしあるとすれば、それは人口過剰でなく人口不足にほかならない。

米国の労働力不足を考えてみよう。十一月の始めごろ、連邦準備制度理事会議長アラン・グリーンスパン氏は、深刻な労働力不足によって米国の米国の生産力と世界市場競争力が脅かされていると発表した。その対策として氏が提案した解決の一つが、輸入の増加であったが、これでは国内の就職口を海外に輸出してしまうことになる。もう一つの解決として氏が提案したのは労働力増加であったが、これは失業率が史上最低の現在、退職年齢を引き上げるほかに実現の見込みはない。ところがグリーンスパン氏が考えていたのはもう一つの解決つまり移民の増加であった。

こういう際、グリーンスパン氏が何を言ったかでなく、何を言わなかったかの方に意味がある。彼が言わなかったのは、一九七〇年代以来、アメリカの出生率は人口補充水準を割っているということである。仕事はあっても、それを引き受ける若い労働力が絶対的に不足しているのである。つまり、米国の人口補充水準が低すぎるために現在見られる経済成長率を支えることがもはやできなくなりつつあり、従って世界市場での競争力が低下するということにほかならない。国勢調査局の発表によると、現在、米国人口の自然増加率は0.5%でしかなく、しかもそれは急激に下降している。出生率が急速に回復するか、大量の移民を受け容れるかしなければ、米国人口は絶対的減少に移行するしかない。

問題はすでに北東地区では明らかになってきている。ノースイースタン大学労働力市場研究センターと非営利組織マスの共同研究は、降下しつつある出生率の社会・経済的衝撃を強調している。この報告のタイトルは" The Changing Workforce: Immingrants and the New Economy in Massachusetts" つまり「変貌する労働人口 — 移民とマサチューセッツの新しい経済」は、マサチューセッツ州の出生率低下、州の人口維持と経済成長に必要な外国移民への依存度上昇を強調している。

この研究はマサチューセッツ州を、移民に頼らざるを得ない五つの州の一つと位置づける。この依存の原因は出生率低下と州民の他州への脱出である。報告によれば、移民がいなければマサチューセッツの人口は今日一九七〇年代よりも少なかったであろうという。さらに、一九八〇年から一九九七年にかけての民間労働力の純成長率の八二%は移民のお陰であるという。

生産性維持に寄与する移民への依存は米国北東部に共通している。ニューヨーク、ニュージャージー、ロードアイランド、コネクティカット、マサチューセッツの五州が、労働力増強のための移民依存度がもっとも高いとされる。移民がいなかったらこれら五州の労働人口は一九九〇年からすると二〇万人減少していたはずである。

人口研究所のスティーヴ・W・モーシャー氏の談話によると「ニューイングランド地方の住民は、人口過剰の神話にかこつけて自分たちの利己主義を正当化するために、自ら望んで一人っ子政策を課してきた。少子家庭を選択した彼らは今もっと大量の移民を受け容れるか、自分たちの地域がますます経済的に沈滞するのをなす術なく見守るほかない。『自由に呼吸することを渇望する疲労しきって、群れている民衆を…』は以下のように書き直されなければならなくなるだろう。『学校を子供たちで満たし、欠員だらけの職場を労働者で埋め尽くし、我らの老後を保障してくれることを渇望し、疲労しきって、群れている民衆を…』」。

出生率が現在の推測どおり下降し続けると、移民に依存というこの現象はマサチューセッツ州近辺の話だけでは済まなくなる。迫りつつある二千年期の米国にとって最大の挑戦の一つは人口爆発どころでなくじわじわ迫りつつある人口内破である。